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食べることは人生において最大の楽しみの一つです。
ところが、食べ物を咀しゃくするうえで必要な歯が痛んだり、失われたりすると、その楽しみを奪われてしまうだけでなく、体のさまざまな面に支障を来すことがあります。
ここでは特に75歳以上の後期高齢者の方の歯の健康について考えます。 |
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これが今、さかんに言われている「8020運動(ハチマルニーマル運動)」です。
人は、最低20本の歯が残っていれば、食べることにそれほど負担を感じないですむといわれ、高齢化社会を迎えた日本で推奨されてきています。
岡山市歯科医師会では、この運動を一歩進め、五十五歳までに二十五本の歯を残そうという「GoGoニーゴー運動」を六,七年前から提唱しています。
というのも、八十歳の日本人の歯の保有数は平均して五〜六本というのが現状です。歯はだいたい、奥歯から抜けるもので、奥歯が抜けるとモノを食べることが困難になってきます。
高齢者の場合、歯が抜ける多くの原因は歯周病にあるため、放っておくとどんどん抜け、最終目標値である「80歳で20本」を軽く下回ってしまうことになります。
そこで設定年齢を大幅に引き上げ、自分の歯をいつまでも残すためには、早いうちから歯に関心をもってもらえるようにしようというのが、この運動のねらいです。もちろん、設定数値には根拠があり、健康な歯が二十五本あれば、ほとんどのものは食べられます。 |
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介護保険が導入されたことで、訪問歯科診療も昔に比べ認知されるようになってきています。訪問診療では、レントゲンや歯を削る道具など、ポータブルな治療ユニットを持って歯科医が自宅を訪問します。入れ歯の型どりや補修、抜歯も行います。歯磨きができない場合は、歯科衛生士による口腔ケアも行っています。
患者は自宅にいながら、病院に行くのとほぼ同じ治療を受けることができます。内科にかかっている場合は、主治医との連携を取って治療に当たることが必要です。
寝たきりになると体を拭いたり頭を洗ったりということは日常的に行われても歯のことは後回しにされやすいです。実の母娘でさえ、母親が入れ歯かどうかを知らないケースさえありました。要介護者が急に食欲がなくなってきたと思ったら、歯ぐきがやせて入れ歯が合わなくなっていたとか、入れ歯が割れて口内に炎症が起きていた、虫歯の治療が中断されたために虫歯が進行した、といったことも考えられます。
高齢者を介護する方は、口の中もぜひ、定期的にのぞいて見てあげてください。訪問診療はだれでも気軽に利用できるシステムです。地域によって管轄が違いますが、多くの場合、地域の歯科医師会に連絡すれば訪問歯科診療を行っている歯科医院を紹介してもらえると思います。
ほとんどの歯科医院は、昼休みや休診日を訪問診療に当てています。そのためか依頼者や患者が遠慮するケースが多いのですが、小さな事でも遠慮せず、何でもかかりつけ歯科医に相談してください。 |
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「口腔【こうくう】」というイメージ的に狭い分野の「ケア」に対しては、歯を磨く、うがいをする、などといったことのみが連想されがちです。しかし、口腔の粘膜は咽頭部(いんとうぶ)(のどの部分)を経て、食道・胃などの消化器や内臓につながっていますし、気管や肺などの呼吸器官にもつながっており、決して独立した気管ではありません。
その口腔内には、歯がある場合、300種を超える細菌が数千億個も住み着いており、適切なケアが行われないと、一兆億個以上にもなるといわれています。それが、虫歯や歯周病の主な原因となっていて、病状が進行すると歯を失うことになり、食べる機能が低下してきます。
また、高齢や病気などにより飲み込む働きがうまくゆかなくなり、さらに体力・免疫力(めんえきりょく)がおちてくると口腔内で増殖した細菌が、寝ている間や食事時に唾液や食物と一緒に気管から肺に入り、細菌感染を起こす呼吸器感染症(誤嚥性肺炎【ごえんせいはいえん】)にもかかりやすくなり、発熱が続いたり、生命の危機にもつながります。
肺炎は死因の第4位(1995年)で、その97%は高齢者といわれています。
私たち、歯科医師・歯科衛生士は、「口腔の疾病(しっぺい)予防」から「呼吸器感染予防」そして「摂食【せっしょく】・嚥下【えんげ】(たべる・のみこむ)障害への対応」といったことなどを通して、「全身の健康」を支えてゆく「専門的な口腔ケア」を行い、必要に応じてアドバイスや支援もしています。
また、「呼吸する」「食べる」という生命維持の働きとどうじに、話す、笑う、表現する・・といったかけがえのない「コミュニケーション」の役割も果たしている大切な「口腔」が十分機能してゆくよう、機能訓練も行いながら、「心の健康」をもサポートしていきます。
そして、一人一人がそれぞれの状況の中でいきいきと生活ができ、人や社会と関わりながら最期まで豊かな日々が送れるよう支援してゆけることを目標としています。 |
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